字を書けなくても空気を読めるような子に
-銀ちゃん(数ヶ月前に誕生した不破氏の長男)は大きくなりました?
不破: いきなりそこからですか(笑)お陰様で2ヶ月で体重が倍になりましたよ。
高畑: 銀は磨けばあらゆる金属の中で一番光り輝きますからね。大事に育てようという親の思いが込められてるようでいい名前ですよね。
不破: ありがとうございます。だいぶ悩みましたけどとても気に入ってますよ。
-親になってこどもを持つと、世界が広がってモノの見方も変わりませんか?
不破: そうですね。コンビニにたむろするガキんちょにさえ、かつては親の愛情が注がれていたんだろうとか思えてきて…。「何が君を変えたのか?」なんて思っちゃうんですよ。今までなら気にも止めない人達にさえ意識がいっちゃうのも変化ですね。
高畑: 話はかわるけど、例えばこどもが他の子にちょっかいを出しそうになるとすぐ謝って止める親って多いですよね。
不破: よく見かける光景ですね。
高畑: それってせっかく子供が下手なりにコミュニケーションをとろうとしているところでしょ。迷惑にならない範囲で子供の世界を広げさせて、その中からいろんなことを学んで欲しいと思うよ。
-その迷惑にならない範囲が難しいですよね。不破さんは役者ですから、会場の雰囲気を感じるように、相手がどう思ってもっているかを察する感覚は鋭いのでは?
不破: 「場の空気を読む」ということですね。もちろん客のリアクションや会場の空気には敏感になりますし、それで演技も変えていかなきゃいけないですからね。
高畑: 不破さんは場を読めるだけじゃなくそれに応じて「空気を作れる人」だもん。そりゃすごいよ。
不破: いえいえ。でもこういったことは学校の勉強では学べないですよね。変かもしれないですけどうちの子は字を書けなくても空気を読めるような、さっき高畑さんがいったようなコミュニケーション能力を持てる子になって欲しいですね。
-スポーツでも流れや空気を読んだり作れるのは大きな能力ですよね。
高畑: いや、スポーツはもちろん、他の勝負事でも日常生活にだって言えること。こどもだってビジネスマンだって…、コミュニケーションをとる上で重用な能力だよ。
不破: 子育てだってそうですね。親がきちんと話を聞いてあげるとか、楽しくていろんなことが話せるような場を作れないと。
子育てに限ったことじゃないですけど、何をするにも『楽しむ』こと
不破: この間ある親から相談されたんですよ。地域のスポーツクラブで水泳教室をおこなった際、2日s目に中2の娘が来なかったんですよ。理由は「できない種目があったから行きたくない」それで親はどうすればいいんでしょうかと。これってどう思います?
高畑: 最初だからできないのが当たり前なのに、相談するレベルじゃないですよね。
-どうすればいいでしょう?じゃなくて、励ましてやればいいのに。
不破: 僕も言われたからといって特別なことはしませんから。
高畑: 親の態度は過保護と放任と全く逆だけど、どちらの子も周りができるかどうかという部分を過敏に捉えて逃避しているね。きっと小さい頃から周りと比較され育てられきたんだろうね。
-小さい頃からの比較?
高畑: 産まれてからずっとだよ。周りとの成長の差を気にしすぎる親って多いでしょ。「もうハイハイしたって」、「もうパパって言えるらしいよ」、「もう習い事始めたらしいよ」。ずーっとそんな調子。そんな周りとの比較で子供をみる他者評価ばっかりで、自己評価をしてあげられない。「どうしてうちの子は…」では親子関係は疲れちゃう。
不破: 親の理想像に向かって、親子で必死になっている感じですね。少子化で親が面倒を見すぎてしまうくせに、肝心なその子の小さな成長を見てあげられない。
高畑: そうですよね。周りに気を取られる労力をもっと自分の子の日々の成長を見出だす方に向けてもらいたいですね。
-そうですね。じゃあ不破さんは子育てで大事なことは何だと思いますか?
不破: 子育てに限ったことじゃないですけど、何をするにも「楽しむ」こと。これは僕の行動の原点ですから
高畑: 親が子育て自体を楽しむのも大切だし、子供に生きるってことの楽しさを教えてやるのも大切ですよね。
-2人をみているとそこが共通項みたいですね。
不破: ウォーターボーイズでも最初の練習は水の中で自由に遊べですから。
高畑: 小さい頃はバックドロップやったり、飛び込んでライダーキックとかしましたね。
不破: それなんですよ。そういった遊びの中から水の抵抗を感じたり、陸とは違うんだって自然に水中感覚が身につくんですよ。
-なるほど、納得です。でもそんなシーンありましたっけ?
不破: テレビ的には感動巨編なもので、遊んでいるシーンはカットされてましたけど(笑)
北島くんは北島くんの、僕らには僕らのそれぞれ違った役割がある
-泳ぐことの楽しさを伝えるのが不破さんの使命ですね。
不破: そうですね。これもある親から聞いたのですが、その子は水の中は嫌だといって泣きながらスイミングスクールに通っていたんですよ。
-どうしても最初は水嫌いな子はいますからね。
不破: そんな時、泳ぎじゃなくてピエロを見に行こうと行って連れてきてくれたんですよ。
-不破さんのトゥリトネスの公演にですね?
不破: そうです。最初は表情の固かったその子はいつの間にか親元からいなくなって、慌てて探すと、プール際で知らない子達といっしょに足をプールに入れて拍手をしていた。親がびっくりしてそんな話をしてくれたんです。
高畑: やはり根底に「楽しさ」がなきゃ動かないよね。不破さん達の演技が、プールは恐いというイメージを楽しいものに変えたんだね。
-楽しい水泳を伝えるのは不破さんのトゥリトネスの活動そのものですね。
不破: 競泳では北島くんというスターがいて引っ張っている。「強くてかっこいい」、「すごい」というイメージがあり、それは水泳界や日本のスポーツ界にもすごくいいことだと思うんです。
-何せ世界一ですからね。すごい人気だし、水泳人口も増えますしね。
不破: そうですね。けれど、ちびっこスイマー全員が勝負の世界を楽しめる訳じゃないし、向いていない子もいますよね。
高畑: たくさんいるんじゃないですか!
不破: そう!その子達へのフォローや取り組みが少ないと、せっかく泳ぎが好きなのに陸に上がっちゃうんです。その子達に「泳ぐのってこんなに楽しんだよ。」と思い出させるのが自分達の仕事。北島くんには北島くんの、僕らには僕らのそれぞれ違った役割があると思うんです。
-子供には競争の世界だけじゃないということを、いろんな世界があることを伝えることが大事ということですね。
高畑: それと同時にスポーツは楽しいものだよということもね。
-親はそういったことを伝えていかなければいけないと思うとちょっと大変ですね。
高畑: 大変と思うからきつく感じるんだって。もちろん大変だけど、子育てを楽しむことができるかできないかの差は大きいよ。
不破: そうですね。自分もこれから子育てを楽しんでいきたいですね。
-2人が話すと結局なんでも楽しくしてしまいそうですね。
不破: そうですね。せめて自分は人と違うところを見ていってあげようと思います。
-不破さんは大丈夫ですよ(笑)
高畑: そう不破さんみたいなアウトローは問題ない(笑)
不破: それって褒められているんですか?
高畑: 自分のレール…、むしろ親のレールだけど。それから外れることを恐いと思いすぎるんだろうね。いろんな生き方、人生の選択肢があるということも教えることができる。外れても堂々と生きればいい。
不破: いい見本だけじゃなく悪い見本でもありたいですよね。不破ごときがあれだけやってるんだと思って励みになれば。
高畑: 2人とも悪い見本としては大丈夫!
不破: はは、結局それですね。
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