-お二人は一年近く前からお知り合いなんですよね。
金井: え、そんな前からだっけ?
-流れの早い世界に身を置いているせいでそんな風に感じるんじゃないですか?
金井: そんなことはないです。人間って、ずっと右肩あがりで伸びていくっていうことはあり得ないです。どこかで「プラトー」、いってみれば「壁」にあたって、そこを乗り越えてまた伸びてゆく。そこでやめてしまうか、続けていけるかで違ってくる。スポーツもそうですよね?
高畑: そうですね。
金井: 例えば、三千万円貯めることを目標にやってきた人は、その三千万を使い切ってしまっても、次の目標は六千万円にできる。何故なら、三千万貯める方法はもう知っているから。
高畑: 金井さんって「成功の方程式」を知っている人だと思う。
金井: いや、「成功の方程式」っていうはわからない。
高畑: でも「ここをこうすれば、こうなる」みたいなのはわかってらっしゃるでしょ?
金井: それは「トレンド」と「タイミング」しかないんですよ。トレンドのものを見つけてきて、それを導入期から成長期にかけて、いかに投入するか。それを見極めるにはマーケティングが大事。経営者って2つ勉強すればいいと思うんです。「マーケティング」と「心理学」。
高畑: 心理学ですか(笑)。
金井: いかにお客様に好感をもってもらうかっていうことも勉強していかなきゃいけないし。どんなことに悩んでいるのかわかってあげなきゃいけない。
また、人を伸ばすために着目していることに、ハイパフォーマーのコンピテンシーっていうのがあって、「自己管理」、「リーダーシップ」、「実績」、「対人関係」、この4つの能力が高い人がハイパフォーマーといわれているんです。うちの社員の中でもハイパフォーマーをピックアップしてそのコンピテンシーについて調べています。
あと、伸びる人っていうのは潜在能力、潜在意識を使っているっていうのがありますね。
高畑: ありますね。
金井: やろうと思ってできない人は、潜在意識、小さな頃のトラウマだったりがブレーキをかけてしまってる。
高畑: そうですね。
金井: そこでヒプノセラピーを学んで、そういったスタッフの前進を助けたりしています。
高畑: 僕なんかも怒られもしたけど、よく誉められたよな、と思います。
金井: 自我ができる前の幼い頃に、親にどう接してもらったかで潜在意識にプラスの要素とマイナスの要素が残っていき、5歳ぐらいで自我ができて、その時点で潜在意識に蓋がされる。そして、大人になって他人から何か言われたとき、つまり、刺激を受けた時にどう反応するか、というのがその潜在意識で決まってしまう。
ヒプノセラピーを使うと潜在意識にアクセスしやすくなるんです。意識と無意識の間に穴をあけるわけです。そして潜在意識にプラスの要素を送り込んでやるわけです。そしてマイナスの要素を減らして行動しやすくしてあげる。
また、カウンセリング、コーチング、コンサルティングを使い分けます。
人には「不安」状態、「可動」状態、「行動」状態、がある。不安をかかえているスタッフ、つまり、何をやっていいのかもわからない状態の人にはカウンセリングを用いてあげる。
次に、可動状態ですが、何をすればいいかはわかっているけど、一歩を踏み出せないスタッフ。この場合にはコーチングを用いてあげる。
そして、次の行動状態になると、一歩踏み出せるけど、やり方がわからないスタッフ。要するに車のエンジンは入っているけど、ギアが入らない状態。そこで、コンサルティングをしてあげる。不安状態のスタッフにコンサルティングをしても駄目なんです。
だから、高畑さんと同じように、心理学を一生懸命勉強するんです。
高畑: どんなことにおいても必要ですよね。
やっぱりメンタルの強さって、考える力があるかどうか、なんですよね。
金井: 考える力を持たせるには、可動状態にないとだめなんです。不安状態におとしてしまってはいけない。
高畑: そこで金井さんが普段なさっていることとかあるんですか?
金井: 「DiSC理論」っていうのがあって、Dは主導の傾向をもっている人間。そして、iは感化、Sは安定、Cは慎重。この4タイプがうまく四輪駆動のようにまわっていくことを大事にしてる。
あとは、コミュニケーションです。コミュニケーションしかないです。
そして、「クレド(カード)」にリッツの考え方の基本になっている。ホテルの「ザ・リッツ・カールトン」の考え方を応用したものなんだけど、この内容を一日ひとつずつ、スタッフみんなで考える。決して「唱和」じゃなくて、「考える」んです。
高畑: でも、ふつう、組織でこういうことをやろうとすると、抵抗する人っているじゃないですか。 金井: 内容によるんじゃないかな。「遅刻をしてはいけません」っていうものじゃなくて、「遅刻をすると気分がよくないよね」っていうもの。
高畑: うーん。僕もこういう「クレド」みたいなものは好きなんですけど、やっぱり、「えー、こんなことやるの」みたいな反応ってあるじゃないですか。
金井: いや、それが「類は友を呼ぶ」じゃないけど、こういうのが好きなオーナーの元にはこういうのが好きなスタッフが集まるんですよ。
高畑: それが聞きたかったんですよ。
金井: トップダウンあってのボトムアップで、まず目標を与えていかないと、目的ってできないんです。
高畑: でも、金井さんがなさっているレベルのことって巷の普通の美容室ではそう簡単にはできないですよね。たとえ、金井さんの講演を聞いたとしても。
金井: それがね、意識って変わるものなんですよ。じつは昨日、地方でセミナーやってきたんです。私のファンのような方々が集まってくだります。その中のある方は本当にド田舎で美容室をやってて、最初は商売っ気なんて全然なかったんですよ。ところが、ずっと僕のセミナーに来てるうちに、これじゃヤパい、っていう意識になって。今では、○○市までのシェアはみんなオレが獲るって。そして、他のサロンのスタッフ達もそこへ行きたがるようになってるんです。だから、オーナーの意識がかわると色んなことが変わるんです。
高畑: そのオーナーの意識を変えていくのが金井さんなんでしょうね。誰かがキッカケにならなきゃいけない。そこで金井さんが成功してなくちゃいけないし、また一方で、金井さんに夢を託しているからそのオーナーの方も変わってゆけたんじゃないかな、と思うんですよね。
金井: そうかもしれないですよね。
いま、成功の方程式ってインターネットで誰にでもわかるようになってきた。だから、いい情報を投げれば投げるほど、うまくいくようになる。心理学ってさっき言ったのもそこにあるんですよ。人って無償で与えられると返さなきゃいけない、って気持ちになる。そして、繰り返し正しい情報をもらっていると親近感を持つようになる。だから、インターネットの出現によって、以前に比べて新規化だったり、ファン化が非常にやりやすくなっている。
最初はインターネットって抵抗感あったんですよ。若い子達はゲームとかから入ってるから違うけど。
高畑: わかります、わかります。
金井: だけど、リアルのビジネスのことがわかっているから、ネットのこともよくわかるんです。デザインやプログラミングはわからないけど、文章はかけるから、できるスタッフに指示を出してやらせるんです。
とにかく、あらゆる媒体を勉強してます。
高畑: すごいなぁ。
金井: とにかくマーケティングが好きなんです。
高畑: マーケティングって昔から興味あったんですか?
金井: 以前はカッコいいモノさえ創っていれば、と思っていたんだけど、経営に携わるようになってからですね。ちょうどニューヨークに行った頃ですね。
高畑: ほぉー。
金井: もうマーケティングを勉強し尽くしちゃった感がある。ネットに関しても本当に研究してる。だから、もしインターネットに出会うのがホリエモン位の年代だったら、彼ぐらいになっちゃってたかもしれない。
とにかくよく勉強している。最初、自分は努力家なんかじゃないと思っていたけど。
高畑: 好きなことって掘り下げていきますからね。
金井: 欲求って大事。女性が「もてたい」っていう時、「この男性を振り向かせたい」っていう思いがあると綺麗になれる。目標と実力にギャップがあると、ストレスを感じるけど、そのギャップを埋めていこうとする。
高畑: ところで、何で美容の世界に入ろうと思ったんですか?
金井: たまたま中学生2年生の時、本屋で立ち読みした「男のヘアカタログ」という雑誌で須賀勇介という人の記事をみて、その人に憧れちゃった。美容師に憧れたんじゃなくて、須賀勇介というその人に憧れたんだよね。ニューヨークと日本を又にかけているところがすごいと。
その時の記事が今ここにあれば、とっても貴重なものなんだけど、引越しを繰り返してるうちに失くしちゃったんですよ。出版元にも当たったんですけど、丁度火事にあったときの出版されたものだからそこにもなかった。
いまでも、記事の配置まで全部覚えています。それぐらい鮮明だったんです。
高畑: 人に憧れるっていうのが一番だと思うんです。
金井: その人が調理師だったら、調理師になってたかもしれない。ヘアーが好きだとかじゃなかった。とにかくその時に一瞬で人生が決まりましたよ。「この人に会いたい」じゃなくて、「こういう風になるんだ」と。
-それまでは何か夢中になっていたことってあったんですか?
金井: バンドです。ベースでした。
-何かご両親から影響を受けたこととかってありますか?
金井: うちは自営業だったんです。洋服屋でした。
父は必ず、支払いにピン札を使ってた。だから銀行で新券に換えてもらわなきゃいけないんだけど、そこへもっていくお札にまでアイロンをかけていたんです。オヤジが言ってたのは、このお札だって誰かの手に渡るんだから、その時にやっぱり綺麗だった方が気持ちがいいよね、と。
そんな背中を見てきたんです。「商人の息子なんだから」って言われて育ってきた。
高畑: うちも自営業なんですよ。
あと、名前って重要ですよね。「豊」っていいじゃないですか。
例えば、自分は「好秀」って説明するとき、「好き嫌い」の「好き」に「優秀」の「秀」って説明しますけど、ポジティブなイメージなんですよね。名前を説明する度に、自分で自分に暗示をかけるみたいな。
金井: ぼくはいくつか候補をあげた中から姓名判断で決めたみたいです。
高畑: やっぱり、親が「どうしてこうゆう名前をつけたか」って子供に話してあげるとポジティブなイメージを植えつけてあげることができると思うんですよ。
ところで、僕には金井さんっていうと、「シザーズ・リーグ」のイメージがすごく大きいんですよね。
金井: まぁ、あれはブームに乗るためのひとつの手段ですよね。
高畑: 僕も色々な「高畑像」を皆に持ってもらえると嬉しいんですよ。
ギャップを感じてもらえると。
金井: 僕もセミナーではギャップを意識してます。そこで引っ張ってくる。
広告でも、まず「誰が見ているか」があって、「その人たちをいかに教育していくか」です。
なんでも文章からはじまる。「文章を書く力」って本当に必要。
ミュージシャンになりたいって思ったこともありますもの。どこにいたって、紙と鉛筆さえあれば生きていけちゃうんだから。
例えば、もしも逮捕されちゃったとするじゃないですか、でも刑務所の中で紙と鉛筆さえあれば、コピーライティングして商材売って保釈金が稼げちゃうんですから。
だからうちの息子にも「国語勉強しろ」って言ってるんですよ(笑)。
売れているセールスレターの書写やったりもするんですよ。読んでるだけじゃわからないんですけど、書いてみると、「こうやって人の心を掴んでいるんだな」っていうのがわかる。
高畑: 僕なんかはどちらかというと情報を遮断することが多いんですよ。似たようなものにしたくないんです。
金井: 感性だけでやっていると、知らないことって出てきちゃうんですよ。セミナーなんかを通じて、「こんなことも知らなかったのか」っていう気づきがある。さっき、「トレンドとタイミング」って言ったけど、それは情報からなんですよ。感性だけでは爆発的なヒットはおこせなくて、「トレンドとタイミング」がマーケティングできないといけない。
でも、「トレンドセッター」になってしまえば、勉強しなくていい。だって自分がトレンドだから。
「キャズムの法則」ってあるけど、トレンドっていうのは「イノベーター」から「オピニオンリーダー」そして「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティー」へと伝わっていく。だけどここで「オピニオンリーダー」の質が悪いとうまく行かない。
高畑: 僕も金井塾に入りたいですねぇ~。
金井: 「欲」が大事なんですよ。
「ブレインダンプ」って作業があるんですよ。自分の脳にあることを全て出し切る。そういうことをやってみると根本の欲がわかる。
あとスタッフの「資質」っていうのをホロスコープで見てみるんです。
高畑: 見てもらいたいなぁ。
金井: 「占い」っていうのは「統計学」であって、「信用」するのではなくて、「活用」しなくちゃいけない。
高畑: 僕も実は、雑誌で占いみたりすると当たってたりするんですよ。
-金井さんのところで働きたいって言ってくるのはどんな子が多いんですか?
金井: ある意味、この本(「すべては記憶に残るサービスのために」)を出したのは、失敗だった。どうしてかって言うと、「やっぱり美容って『サービス』なんだ」って勘違いした子が集まってきちゃったから。
クリエイティブっていうところでずれちゃってる。サービスはあくまでも「付加価値」。
高畑: わかるなぁ~。
金井: 若い人たちには目標を追求していって欲しい。ただ単にメジャーになりたい、じゃなくて、何でメジャーになりたいのか。そこの「なんでなのか」というところ。
潜在意識を活用していかないといけない。そこが面白さでもあるんだけど。
高畑: 面白いですね。
金井: 他人ってコントロールできるんです。
自分をコントロールできてはじめて、人間は他人をコントロールできる。
高畑: それにしても「シザーズ・リーグ」って僕には本当に強烈でしたよ。
会場の中から任意で女性を選んで、どっちがより綺麗に出来るかを美容師どうしで争うっていう番組。
自分をあきらめているひとに、自分の可能性に気付かせてあげるっていうところですごいと思ったんですよ。
金井: 今度、リッツでつくっているのは「外見的なもの」と「内面的なもの」を合わせて、ワンランク上の女性してあげる、というもの。これは当たりますよ。
高畑: それは面白そうですね。楽しみにしています。
|